前二作の「逃避行」「楽園」がファンタジーだったので、三部作にすれば収まりがいいな、短編集の第二弾として出せるな、と書いたものです。

前々作の「逃避行」が過去を舞台に、前作の「楽園」が現代を舞台にしたので、未来の話を書こうと。さらに前二作では雪の荒野、山、森を舞台にしたので、海にしようと思いました。

地球の温暖化と地殻変動で地表の大半が水没し、デジタルはおろかアナログの文明までほぼ消えた世界です。文字による伝達さえ失われ、科学の知識を失い、そうなったとき人はどうなるか。

おそらく天動説を信じるようになるでしょう。地球がたくさんの星の1つというのは学校で教わったりテレビなどで見るから知識として身につきますが、そういった情報がなければ実感できません。自分たちのいる場所が世界の中心。そして予測できない自然現象をはじめ、世界の無秩序を納得するのに宗教をこしらえるでしょう。

それは現代人から見ると滑稽かもしれない。なんとかツジツマを合わせた物語。

しかしそんな物語を人は切実に求めてしまう。不可解なことに見当をつけ、都合のいい解釈をして思い込む。

そして科学分野以外でも人は物語を欲し、それによってしか満たされないものがある。嘘や間違った物語を嗤えない、こしらえるのを他人事とは思えない、そんな話になればと思いました。

最初に描きたかったのは未来の「世界」ですが読んでもらうにはストーリーが必要で、「話」はホームドラマです。世界が突飛なのでストーリーは身近なものにしようと思いました。

大筋は「シェーン」ですね。パクるつもりはありませんでしたがいろいろ組み立てていくうち似たものになりました。最初は「シェーン」と同じように一人息子の家庭を考え、しかしもっと色気が欲しいと姉を加えた姉弟になり、結局弟はいらない、と一人娘に落ちつきました。「水の星を旅する男」と題してますが実際は女の話です。


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