「友情結婚」以来の現代物です。そのあいだに書いた短編3本が架空の世界の話、ファンタジーでした。

ファンタジーはあまり書きませんがとても楽しめました。キャラクターやストーリーは勿論、世界の設定まで自由につくれます。

しかし大変は大変でした。世界観まで造り込み説明しないといけない。

説明が増えるのはそれはそれで「小説っぽく」なってよかったのですが、3本書いてちょっと疲れました。もっと説明の少ないもの、少なくて済むものが書きたくなりました。サクサク話が進むもの。

現代物は読者が同じ世界にいるので共通項で書けます。説明が少なくて済む。

執筆を思い立ったのは2019年の6月です。時期が時期だったので夏の話を書こうと思いました。

自分は昔からさまぁ~ずが好きで本作は多少その影響があります。

「さまぁリゾート」のエンディング曲「夏色サンセット」が気になっていて、執筆前にはじめてちゃんと聞いてストーリーが膨らんだり。

あとは「モヤモヤさまぁ~ず」の4代目アシスタントが登場するまでのあいだ毎週ゲストが来ていたのですが、芳根京子さんの回を見てその魅力にやられたり。

小説の土台になるシナリオをすでに書き始めていましたが、後半は芳根さんをイメージして書いたりしました。

勿論作者の勝手なイメージです。読者によっては「違う」となるかもしれない。ご本人にとっては迷惑かもしれない。 イメージはしましたが具体的には何も書いてません。元々キャラクターの容姿などは細かく書く方じゃありませんが。

それは「作者のイメージは二の次」と考えているからです。作者のイメージを表現するより、読者が自由にイメージできるかが大事。

自分がシナリオをよく読んでいた時の楽しみ方は、実際の配役でシーンを想像するものではありませんでした。セリフから各キャラクターの内面を想像し、脳内で全員を演じつつストーリー展開を味わうもの。

つまり好き勝手に楽しんでいたんです。本が中心ではなく自分が中心。

それでいいと思います。そして自分の小説は、そういう楽しみ方をしてもらえたら、と考えています。

作者のこだわり、細かな設定や描写などは読者のイメージを縛ってしまい、かえって邪魔になる。なので書かずに済むことは書かない。書かないと「何も浮かばない」「混乱する」「矛盾を生む」という場合は書きますが、最低限にとどめているつもり。

小説は文字だけなのに文字を減らしたら…と思われるかもしれませんね。文字だけで画や音がない、映画などに比べたら武器が少ないのに。

しかし自分は逆と考えています。画がないから自由に想像できる。そして人によって想像するものは違う。つまり無限に物語がつくれる。こんな武器は他にない。

ラジオはとても近いかもしれません。「文字だけ」と「音だけ」の違いはありますが、武器が少なく見えて実は画という情報がないからいい。ないから音が、声が、話す内容が際立つ。想像が膨らむ。

文章は文字をたくさん使えばいいというものではなく、書けば書くほど意味が薄まることはあります。

例えば100の内容を伝えるのに200の文字を使ったら、ダラダラ感、ムダに読まされてる感が加わり集中力が落ちます。かえって伝わらない。

自分は100の内容をできれば70~80で伝えたい、と考えています。緩急のためにあえて100で、ダラダラ感を醸すのに120で、ということはありますが、文字を減らして100の効果が出るならその方がいい。

それは「多少不足気味の方が疑問を残して繰り返し読まれる」という狙いもなくはないですが、それよりシナリオの影響です。

シナリオを読んでいる時に感じたのは、「言葉にすると台無しなことがある」ということ。表情や間でしか伝わらないことがある。セリフにするとかえって伝わらない。

小説もそうで、文字にしない方が伝わることはあります。それをいつもさぐってる。「できれば70~80で」というのはそういう意味です。

さらにラジオからは、「文字にすると台無しなことがある」ということを感じました。

音で、声で、聞く人の中に入り、残るのは心の中だけ、記憶にだけで(録音しない限り)文字のようには残らない。しかしその軽さ、儚さがいい。改めて文字にするとオーバーになる。変質してしまう。消えてなくなる音だからこそで、文字では伝えられないことがある。

文字だけの小説を書きながらそれを認めるのはなかなかしんどいんですが。なんとか表現したいのに「これは文字じゃムリだ」とわかった時。

最終的には諦めます。「できれば書きたい」なんてのはそれこそ作者の勝手で、読者には関係ない。どうでもいいことです。書いてなくても想像する読者はするし、表現するのにこだわって流れを悪くするなら書かずに「未熟」「至らない」と思われる方がいい。

そういったスタンスが基本にあって、さらに本作は主人公が18歳の若さということで、言葉が達者すぎるとリアリティーを損なう、とも思いました。巧みに言い表わすよりたどたどしさが味になればと。

なんだか言葉足らずの言いわけを並べてるようですが、作者としてはあれこれ意図があってこの仕上がりになりました、というお話です。読者の皆さんにとってはどうでしょう。楽しんでいただけるといいのですが、とりあえず作者は楽しく書けました。


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