【 あるハワイの芸術家 】 について
シナリオに取りかかったのは2019年の年末でした。年末年始の連休を使ってシナリオ、さらに小説まで書き進めました。
年末年始を利用しようとしていたので下準備の期間がまぁあり、細かな部分まで固めてからつくった話です。
例えばタイトル。あるハワイの芸術家。そのままですね。なんの捻りもありません。
洒落たタイトルから「こんな話かな?」とイメージされ、読んでみたら「全然違った」「思った話じゃなかった」となるのは読者にとっても作者とっても不幸なことなので、なるべく避けたかった。つまり「お断わり」です。
あるハワイの芸術家の話ですよ。ハワイにも芸術にも興味なければ楽しめませんよ。あらかじめご了承ください。
ハワイを舞台にしたのはいくつか理由があります。
構想を練っていた時の日本は安倍政権による公文書の改ざん、破棄、隠蔽がまかり通り(今も解決してない)そういった明らかな悪に直面して、物語のこと、家族の微妙な話などはちょっと書けないと思いました。
いま書くべきは真正面に不正を正すものと考えましたが、それは専門外で難しく、書けるとしたら娯楽の小説。それに意味がないというわけではありません。意味はあるし時代や世界が変わっても通じるものを書いてるつもりですが、今の日本を舞台にして書くのは違和感がありました。
かと言ってトランプ政権のアメリカならしっくり来るのかと言うとそうでもなく、そうこうしてるうちにコロナウイルスによる災禍で世界は一変してしまいましたが。
よってこの物語はコロナ災禍の前の話、もしくはコロナ禍のないパラレルワールドの話とお考え下さい。
とにかくストーリーのおおよそを浮かべた時に日本ではない他国を舞台にしようと思いました。
テーマが人によっては辛辣、受け入れがたいかも、というのもありましたね。外国人の芸術家が言うこと、とすれば拒絶のハードルは下がるんじゃ、と。自分から遠い人の言うことは他人事で片づけられる。
ハワイを選んだのは元々ハワイ好き、というのもありますが、ストーリーが地味だったからです。
「家族の話」で「会話と回想が中心」で「動きが少ない」
ストーリーが地味なので彩りが欲しいと思いました。日本人にとっての観光地、ハワイを舞台にすればそれだけで異国感、旅行気分、現実逃避の作用があるだろうと。
テーマは以前から書いていたものです。物語について。
近年はあからさまに書くのを控えていましたが、もっとはっきり書くべきか、と思いました。伝わってる感がなかったからです。
それにいま書けば前よりうまく書ける気がしました。
と言ってもだいぶ控えめな仕上がりになったと思います。テーマの占める割合はストーリーを超えないようにし、書きたかった創作論や物語論はだいぶ割愛しました。
また、いろいろ発言しながらも最後に「発言することの否定」を持ってきたのは、テーマを中和するためです。昨今のSNSに対する正直な感想ですが、あえて足したのはバランスをとるため。
そして短く切り詰めたのもあえてです。
20年ほどの歳月を1時間で読める小説にすることで、その要約、圧縮、切り取りがそのままテーマを補強するサンプルになれば、と意図しました。
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